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続々 ハンドメイドとマシンメイドの差


一方ハンドラスティングの場合は、ハガキ14枚の厚さを一度に吊り込むという力技は使えません。

ライニングを丹念に吊り込み、さらに分厚い2.3mm厚の革でできた先芯(トウパフ)を吊り込み、最後にアッパーの革を吊り込むという非常に時間と手間がかかる作業になります。

特に先芯に関しては、近年はハンドメイドでもアセトンを使用するプラステック芯を用いるところも少なくはないのですが、ここでは吟付きの2.3mmの分厚い革芯を使用します。

革芯は一度水で柔らかくしてから、吊り込んでハンマーで叩いて革を絞めて形成します。その後一昼夜ほど放置し革芯が乾いた後に、さらにガラスの断面を使って削り、さらに形を整え段差を滑らかにしつつ、トウの形状の下地を造り上げていきます。

さらに、アッパーの革を吊り込んだのちも、ハンマーでトウの形状を叩いて形を整えるという非常に時間と手間のかかる作業を経て作られています。

この工程でもっとも 重要なのは、2枚目に吊り込む革の先芯を如何に理想とする形状を作り上げるベースを整えるかに懸かってくるのです。

独特のチゼルトウで有名なメイカーでも、仕上げるアウトワーカーによってトウの形状が微妙にかわっているのを何度か見たことがあります。(面倒な事になるので、ここまでの表現にとどめておきます。)しっかりと発注元のハウススタイルを熟知したアウトワーカーでなければ、このベース作りによって靴の表情まで変わってしまうようです。

また、トウのメダリオンもハンドラスティングにすることにより、より細かく繊細な感覚で穴を開けることが可能になります。マシンのトウラスターで一気に吊り込む場合は、メダリオンのピッチが細かすぎると穴が裂けたり、張力で穴が歪んだりするようなので、こうしたところにも微妙に影響してくるのです。

このようにトウの形状にこだわりを持って形成するには、これほどまでに時間と手間を有するものなのです。

とはいえ、マシンメイドはこうした一連の工程を簡素化して大量生産、コストダウンを図っているため、より安くより多くの人に靴を提供できるのです。ですから最初に断っておきますが、ハンドメイドに劣るのだというつもりは毛頭ありません。

ただ、個人的な意見を述べるとすれば、ハンドメイドによって時間と手間を必要以上にかけ、それを価格に反映し、顧客からそれなりの対価を得るつもりなのであれば、マシンを凌駕する品質を提供する事が職人としての矜持ではないかと考えています。

今回のマシンメイドとハンドメイドを具体的に述べるという企画は興味深いので、次回はもう少し細かいてんについてポイントを整理しながら解説したいと思ったのですが、論点がまとまらないので、とりあえずここで一旦終了します。

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