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イノシシのたてがみ針について(清角の補足)

村上くんにばかりコラムを書かせるのもどうかと思うので、今日はイノシシのたてがみ針について補足しておきます。

私が初めてイノシシのたてがみを縫い針として使っているところを見たのは、今から23年位前のイタリア中部のグロッセートのIl Riccioの工房に在籍していたときの話となります。 ある日、親方のMicheleから今日はおまえにいいものを見せてやると言われ、見せてもらったのが奇妙な生き物の毛でした。

何が奇妙なのかと言われると、15cmほどのまっすぐに伸びる太い一本の毛には、しっかりとした毛根が残っており、その毛先は枝毛が幾重にも拡がっていました。


これはイノシシのタテガミの毛で、このタテガミの毛根部分を針先にして縫い糸を絡め、靴のアウトソールを縫い上げていくんだと教えてもらいました。 (実際には鉄製のキリで穴を開けてから、タテガミに糸の先端につけて穴に通すものであり、いわば超極細の紐通しにあたります。流石に毛根で分厚い牛革ベンズは貫けない) でも最近は鉄製の細い針が普及したおかげで、このたてがみ針を使うことが少なくなってしまった。また、手縫いの職人も随分と減ってしまったので、いつの間にかこのタテガミはあまり職人の界隈に出回らなくなってしまったとのことです。

だから、今日はお前に見せるためにわざわざタテガミを使って縫って見せてやってるが、本当に言えばスチール針の方が縫いやすいんだ。

しかも、このタテガミも随分前に手に入れたのもので、乾燥していてコンディションが悪く、毛先が切れやすくなってるからあまり使いたくないんだと言いながら縫い上げていました。 実際に縫いあげるところも糸をタテガミに絡ませるところも見たのですが、肝心の毛針の取り付け方や太さや長さを全く覚えておらず、今後自分自身で毛針を使うことなどないとその当時は考えておりました。 それから20数年の月日が経ちました

そして昨年秋にリハビリライドで訪れた糸島半島の彦山のヒルクライムのでの出来事です。 昨年の入院手術でほどよく痩せることができたので、ヒルクライムがどれくらい早くなったのかを試すために、糸島半島の彦山(150mにも満たない低い山)を登ってみました。 結果としては体重は落ちたが、体力はそれ以上に落ち、肝心のタイムも落ちているという非常に残念な結果でした。 そして息も絶え絶えになりながら、ようやく頂上まで辿り着き、そこからヨロヨロと坂を下っていると、細い山道に推定80kg近くはあろうかというオスのイノシシと遭遇してしまいました。 わずか一瞬のことではありましたが、幸いイノシシはこちらに向かってくることはなく,ラチェット音を立てる自転車を一瞥だけして山の茂みの中に消えてゆきました。


こちらに向かってこなくてよかったモノだと、鼓動が早くなった胸をなでおろしたと同時にふと思いつきました。 なかなかいいコンディションのタテガミを生やしたイノシシは案外近くにいるじゃないか。


つづく

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